水底のうたかた

たまさかのお喋り

2014-01-01から1年間の記事一覧

短い漂流の後、ふたたび戻り年の瀬となって、それから。

雨滴の向こうには見慣れた光景がひろがっていました。見慣れている筈なのにどこか感興が去年と異なるのは、ふり解けない鎖の象徴だった景色が、やや懐かしさを帯びていることでしょうか。深緑色の葉も季が移れば枯茶色に色づくように。背後では絶えざるテレ…

6月12日――日記からの抜粋

https://www.dropbox.com/s/n6n57aj4ggm8w68/%EF%BC%96%E6%9C%88%EF%BC%91%EF%BC%92%E6%97%A5.pdf (PDF版) しきりに降っていた午前の雨はいつしかやんでいた。その名残、洗われた街々を掠めゆく澄みわたった湿やかな空気は地下鉄で数駅を跨ぎ見知らぬ土地へ…

習作掌編『じゅげむ』

不定期に更新している身としては前回からさほど間隔を空けずしての更新となりました。習作として掌編を書きました。以下のURLからPDFをDLできます。 https://www.dropbox.com/s/35sly5fktab5kmr/%E3%81%98%E3%82%85%E3%81%92%E3%82%80.pdf 今回は準…

あの坂の向こうは

記憶は場所に対して様々な変容をほどこす。平凡な光景も時には驚くほどの彩色を帯びて他人の目に映ることもあるし、それは大抵、他人とは分かち合いがたいものだ。小説を読み、ここにはわたしの幼年時代、わたしの童心がある。この小説の人物の苦悩はわたし…

おもしろうて、やがて悲しき東京紀

ぼくに日記を書く習慣があまりないのは出来事の正確な記録よりも、不可視の空気感や途切れとぎれのカットの寄せ集めを、写真を見返すように何度も頭のなかで反芻するのが好きで、それだけで満足してしまうからだ。まして他人に対して自己を記録的な形式で明…

最期には、孤独な舞踊

今年最初の更新になります。ほんとうは年末に掲載する予定で、草稿には年の瀬の挨拶とか書いてあったのですが諸事情により間に合いませんでした。まあ別に期限があるものでもないですが。 主に、最近観たまどマギの映画について考えたことをちょっとここに書…